成長していく…子ども、という存在をあらためて愛おしく感じる『あたらしいぼく』
- 2016/02/23
- 08:00
あたらしいぼく シャーロット・ゾロトウ作
『 あたらしいぼく 』
シャーロット・ゾロトウ文 エリック・ブレグヴァド絵 みらい なな訳
童話屋 1990年11月発行
子どもたちは、繰り返し こころゆらぎながら 成長していく。
その節々に、脱皮するような時間 があると思うのだが。
いつもの暮らしの中で、その変化が起きていく 様子が、自然に、やさしい眼差しで描かれている。
子どもの成長には、説明のしようもないような、理不尽さや、不可解さもある。
そういう理解しがたいもどかしさ、変化を受容していくプロセス…、それらをこんなにわかりやすく描写した本をあまり知らない。
ひとりの男の子があたらしいぼくへと成長する、瞬間、とも言える、数日を追った絵本。
読み終えたあと、さわやかさと温もりがこころに残る。
さて、この絵本は 童話屋 の出版物。
童話屋さんには思い入れがある。
もう、かれこれ20年以上前のこと、大宮のイトーヨーカ堂に「こども図書館」があった。
小さいスペースながら揃えられた絵本のラインナップは圧巻きで、当時、同じ埼玉県の少し北、蓮田市に住んでいたわたしは子どもたちを車に乗せて頻繁に通っていた。毎回、家族中の図書カードで山のように?!絵本を借りてきては子どもたちに読聞かせをしたり、わたし自身もよく読んだ。
絵本、子どもの本の世界の歴史を学べるほどに系統だって取り揃えられている印象があり、ゾロトウをはじめ著名な作家たちの絵本は小さなものまで網羅されていた。おそらく、わたしがシャーロット・ゾロトウの絵本に出会ったのもこの頃だろう。
正直、ここにある絵本をすべて読みたい…と言っても言い過ぎではないような図書館だった。
童話屋さんが委託運営していたもので、貸出しだけでなくイベントなどがあった記憶もある。
残念ながら2009年に「こども図書館」は大宮店に限らず、全国数カ所にあったものが閉鎖になったらしい。その後、一部復活の記事もあるが…。どうなっているのだろうか。
子どもの本は今も日々たくさん出版されているが、店頭で、あるいは身近な図書館で、子どもたちがどんな絵本に出会えるのだろう、と思うとき不安も大きい。
しかし、だからこそでもあるのだろう。子どものための絵本屋さんやスペースや様々な試みが全国各地で生まれ、魅力的な活動を続けているようだ。
このブログでは子どもの本の出版社他、関連するお店・活動などを紹介するTwitterリストのタイムラインを設置している。(スマホ版では見られないので、PC版でご覧ください)
このタイムラインを眺めているだけで、わたしは幸せになる。絵本の美しいイラストや興味深いエピソード、楽しいイベントなど、ひとつひとつ訪ねて歩きたい…そんな気持ちにもなる。
わたしも絵本屋さんになりた〜い!
「こども図書館」に通っていた当時、わたしは「子ども文庫」を作りたいと思って絵本や児童書を集めていた。その夢は道なかばで終わっているのだが、今もなお、小さなアパートには似合わぬ量の絵本がある。それらは保育園勤務時代に活躍したり、我が子たちによっても読み尽くされてずいぶんとくたびれた様子のものも多い。良い状態の絵本は東北大震災直後、被災地にかなりを贈った。
「こども図書館」の日々から、わたしの人生もいろいろなことがありずいぶんと月日が経ったけれど。
いつか今ある絵本たちが再び活躍できる場をと考えている。
童話屋さんのことから、話が横道にそれてしまったが…。
絵本って、子どもを大事にすることを前提にしている文化だ、と思う。
それは、大人の中の小さな子どもたち…を大切にする文化でもある。
今と、かつての子どもたちを癒して、楽しませることは…。
ひとりひとりのこころの平和に。
社会の平和に繋がっていく。
子どもを大事にしない文化…、社会なんて、成立しないはずなんだけどね…。
『あたらしいぼく』の物語を読みながら。
成長していく…、子ども、という存在を、あらためて愛おしく思う。
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