美しい色が織りなす歌のような絵本『おふろばを そらいろに ぬりたいな』
- 2016/02/27
- 00:00
おふろばをそらいろにぬりたいな (岩波の子どもの本)
『おふろばを そらいろに ぬりたいな』
ルース・クラウス文 モーリス・センダック絵
岩波書店 1979年9月 岩波の子どもの本
前に紹介した『わたしはとべる』のルース・クラウスが文章を書いている。
絵はセンダック。
訳は大岡信。
なんと贅沢な面々が揃ったことかと、つい俗っぽい見方をしてしまう。
たしかに、凄い仕上がり。
ためいきがでる…色の美しさ。
ストーリーの自由さ。
言葉の音・リズム。
タイトルから想像されるストーリーを遥かにこえて展開する物語はユートピアに至る。
美しい色が織りなす物語は歌のようにリズミカルに音色を、想像の世界へ、未来へ響かせる。
子どもって、おふろばから…どこへでも、どんな世界にも自由に行くことができる。
ぼくが つくる うちは
ゆめに でてくる おうちさ。
いつも みている うちとは べつなんだよ。
にじ みたいな おうち。
ともだち みんなが ぼくと いっしょに
そこで すむんだ。
にじみたいなおうち。
ともだちの顔の色は、いろとりどり。
虹色。
絵を描いたセンダックは亡くなる数年前にゲイであることを公表したという。
この本の原書が出版されたのは1956年。
まだ今のようなLGBT(レズビアン・ゲイ・バイセクシャル・トランスジェンダー)や多様性を象徴するレインボーフラッグは登場していない頃だろう。
でも虹色の表現にレインボーフラッグと重なるメッセージも感じる。
いろんな人がいて、いろんな人と生きるのは、たのしい!
いろいろな人が、大事にされる、安心して暮らせる家(社会)を希求する気持ちが伝わってくる感じ。
わたしは、いろいろ…を感じると、多様性を感じるとすごくほっとする。
同じであることを求められて生きるのはきゅうくつ。
自然の色は、限りなくあり、空も海も、葉の色も、一色で描くことはできない。
そんな空や海や葉を見てほっとする。
歌うようにして、案内されるユートピア…
この絵本は、子どもたち。
そして、おとなたちへの。
自由な世界に向かうための道案内にもなりそうだ。
- 関連記事
スポンサーサイト
トラックバック
「みどり」に繋がることをテーマに。
本は、古本、新刊本、バーゲンブック(BB)を取り扱っています。
●絵本 、小説、詩集。自然、社会。暮らし、手仕事、アート。こころ、からだ。
●多様性、当事者性を尊重する視点で選書。●季節の移ろいを感じられる本屋に。